修士研究で、小学校教諭の業務負担軽減を目的としたICTサービス開発をしています。
昨今では、初等教育においてICT教育に取り組むことが重要視されています。併せて、文部科学省が掲げる学習指導要領も約3年毎に改訂され、追加の対応が日々求められています。
ICT教育では、身近な問題の解決に主体的に取り組む態度や、コンピュータ等を上手に活用してよりよい社会を築いていこうとする態度などを育むことを目的としています。
文部科学省はGIGAスクール構想を掲げ、2020年度中に新学習指導要領として、無線LANや学習者用コンピュータの整備など、「ICTを活用した学習活動の充実」を推し進めています。
児童にICT教育を推し進める一方で、教育現場そのものに対しても、ICTの導入が急がれています。
ICT環境の構築にあたって、全国の教育委員会や学校、企業と協働して、ポータルサイト等を活用しながら教材開発や教員研修の質の向上を目指しています。
また、学校のICT環境のクラウド化を推進し、授業・学習系システムと校務系システムの安全な連携手法の確立を目指す動きもあります。
教育ICTツール普及によって小学校教諭の負担軽減に貢献しているが、充分に軽減できているとは言えず、更なる解決策が必要といえます。
負担が軽減できていない理由は複数あるが、教諭が(比較的最近の技術である)ICTに適応できず、ツールを使いこなせていないことや、小学校現場は中学校や高等学校とは異なる文化や環境があると考えられます。
本研究では、小学校特有の課題があるのではないかと考え、調査を行っています。
授業中にICTツールを使用しない理由を調査した結果、授業中にICTツールを活用できている小学校教諭が少ないことがわかりました。
既存のICTツールを比較すると、『一問一答形式』が共通する特徴であることが明らかになりました。また、特定の授業・特定の単元でのみ利用できるICTツールが多数存在し、ITの強みであるデータ活用(DX)が行えない状態であることも明らかになりました。
そこで研究室では、定期的に小学校教諭に対してヒアリングを実施し、必要なICTツールの機能開発に取り組んでおります。
児童の思考過程とは、取り組み中に書いた文字・かかった時間・手が止まった場面や、解答までの時間の推移などを指します。これらの情報を定量かつ数値(座標)データをしてデジタル上で収集・保存します。
収集したデータを分析することで、教諭が採点しなくても、児童の解答の傾向や、注意が必要な児童・場面を選別し、教諭によって最適な形で提供できる仕組みを提案しています。
本研究によって、教諭の事務負担軽減を可能にし、実際に教諭に使われるICTツールを模索し、アジャイル開発しています。